合同会社 雄飛企画
津村 道夫(つむら みちお)さん
https://www.yuhi-planning.co.jp/
いつ創業し、どのような事業をされているのですか?
2016年3月に創業しました。首都圏にある私立高等学校を紹介するフリーマガジンを年1回制作し、公立中学校の3年生に配布しています。今年は10万冊を配布しました。①掲載範囲を絞った『東京西版』『京浜版』『埼玉城北城東版』の3版を発行して学校を紹介している。②無料で、公立中で配布して直接受験生に届けている。というのが特徴です。該当地域の全高校の情報を掲載していますが、有償で協賛いただく学校には、その情報に加えて1ページあるいは半ページの「フリーメッセージスペース」を提供して学校からのメッセージを掲載しています。
創業のきっかけを教えてください。またなぜ創業したのですか?
私は元々、私立高校で広報担当業務を行っていましたが、学校を受験生に紹介する最適な広報手段をなかなか見つけられないでいました。高校の顧客は「おおよそ1時間以内で通える範囲に住んでいる「公立中学校の3年生」であって、「地域」と「人物」が非常に明確です。最もダイレクトに学校を紹介できるのは、「紙面の学校案内パンフレット」を公立中学校で担任の先生から生徒に配布いただくこと。だからと言って、全私立高校が周辺の全公立中学校に学校案内の配布をお願いしたら大変な数になってしまいます。また同じく紙媒体である「市販の受験情報誌」に広告を載せるという選択肢もありますが、市販のため全受験生に届くわけでもありません。また、対象範囲が広すぎて、受験生にとっては通える範囲の学校より通えない学校の方が多い状況です。それらの状況を思うときに、「地域にある私立高校が合同で学校紹介を1冊にまとめたパンフレットを作成して、中学校に届け、中学校での進路指導用資料として活用いただく」というアプローチで雑誌を作ればいいのではないか?と思いつきました。広告営業を頻繁に受けており、費用の相場観は分かっていたので、このアイデアが実現した場合の予測ができましたし、他の企業がやっていない視点が含まれていたので、これは事業化できるかな?と思いました。尚、弊社WEBサイトにて創業ストーリーを漫画にしているので、ぜひご覧ください。
創業してしばらく経ちました。実際にやってきてどうでしたか?
「捕らぬ狸の皮算用」という言葉は創業当時、そして今も良く思い浮かぶ言葉です。当初は「多摩地域の私立高校が対象」のフリーマガジンとして始めました。机上の計算では、多摩地域の高校が十分に参画していただければ、私ひとりの生活をまかなうには十分な利益を得ることができると考えましたが、実際にはそう簡単にはいかず、想定の半分程の売上だったかと思います。ただ、半分であってもギリギリの利益は確保できたのが幸いでした。一度広告掲載いただければ、継続的に掲載してくださる高校が多いので、先を見ることができました。ただそれでも「多摩地域」だけの発行では厳しいというのが分かってきたので、新しい「版」を設けて地域を広げるという判断をしました。結果、現在は3つの地域で発行しています。個人的な変化は、やはり家族との時間がもてるようになったことが最も大きなことです。会社登記はi-office、仕事は基本的に自宅です。創業当初は自宅にいても仕事漬けでしたが、それでも自分で時間をコントロールすることができました。今も、収入としては十分とは言えないのですが、創業前と比べて家族との時間は大幅に増え、充実した生活を過ごすことはできていると思います。
苦労や想定外のことをどう乗り越えましたか?
弊社は「学校と受験生を繋ぐ」ということを掲げていて、雑誌発行だけを事業とはしないことを創業当初より考えていました。(そのため会社名も「雄飛出版」ではなく「雄飛企画」です。)フリーマガジンの事業は、顧客が高校であり、数が限られます。基本的に潰れないし、継続掲載がほとんどなので安定して広告費をいただけるという点では安心なのですが、劇的に売り上げが増える見込みもありません。そのため、各高校を顧客としつつ、他にも柱となる事業(商品)はないだろうかと考えてきました。この10年間で、いくつもの企画を発案、検討、試験運用してきました。ただ、形になったのはわずかです。なかなか形になっていないのは残念ではありますが、わずかであっても形にすることができているのは私自身にとっては嬉しいことです。普通の会社員であれば、アイデアがあってもその実現のために具体的に検討することすら簡単ではないと思いますが、一人でやっているので自分の判断で可能なところまでトライすることができます。ただ、自分一人でアイデアを練るのは簡単ではなく、本来は他の人と共有する中で精錬していくのがベストだと思います。それが一人で会社を経営する場合に難しいところではあるのですが、最近はAIが登場したことで、AIとのアイデアのラリーを行うことができるようになったのは大変有効だと考えています。
今後の展開を聞かせてください。
一人で会社を経営しているため、大きな成長はあまり考えていません。しかし、まだまだいろいろな事業に取り組みたいとは考えています。フリーマガジン事業については、いかに広告掲載いただける学校を増やすか、というのがポイントですが、10年やってきて、簡単なことではないと思っています。地道な営業を活動を続けるしかありません。その他の事業も、形になっているものもありますが、なかなか成長しません。判断が難しいと感じるのは、なかなか成長しない事業についての対応です。もっと力を入れれば成長するような気もするし、いっそそれは止めて他の事業に力を入れたほうが良いような気もするし…。ただ、いずれにしても、新しいアイデアは出続けると思うので、あれこれトライしながら会社経営を行っていくと思います。長期展望としては、5年後にはせめてもう1つの柱となる事業が展開できるようにしたいと願っています。
起業を志す方へのアドバイス

創業を思い至る時はどうしても「うまくいく」ことを考えてしまいます。しかし、私の場合は、創業してまもなくの売上は、「想定の半分程度」でした。その経験から申し上げると、「売上が想定の半分でも事業が続けられるのか?」ということを考えることをお勧めしたいです。また、柱となる事業だけでなく、他の事業も並行して行う可能性も考えておくと良いと思います。結果的にうまくいくなら良いですが、当初の想定通りにすべてがうまくいくとは限らないのが現実かと。それでも自分の夢を実現できるような計画を立てていただければと思います。そのためには、創業計画書の作成にしっかりと取り組むことは大事だと思います。創業時、そしてその後の資金調達の際にも重要な資料となります。
アドバイザーからの一言着眼点が素晴らしいですね。ご自身が私立高校で広報を担当されていた経験から、「現場で感じた不便さ」こそが起業の原点となっています。とはいえ、他に類を見ない新しい事業に踏み出されたわけですから、不安やリスク、営業面でのご苦労も多かったことでしょう。それでも、単にマガジン発行にとどまらず、「学校と受験生をつなぐ」という一貫した理念のもと、創意工夫を重ねてこられました。その柔軟な発想と地道な取り組みこそが、事業継続のポイントとなっています。今後もその理念を軸に、新たな事業の柱の展開へとつながっていくことでしょう。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |









