ユニバーサル・リアルティ株式会社 代表取締役
玉岡 一央(たまおか かずふみ) さん
ユニバーサル リアルティ株式会社は、主に武蔵野・三鷹・杉並の店舗とテナントを仲介する不動産屋さんですが、いろいろなアイディアの提案もしてくれる、今までにない新しいタイプの不動産屋さんです。近日、本も出版されるようなので、お話を伺ってきました。
不動産業を始められたのはどんなきっかけですか?
私が子どもの頃に父親がハーモニカ横丁で焼き鳥屋を経営しておりまして、小学4年生の頃からその店の手伝いをしていました。その後、アパレルに興味があったので、スタイリストになりたいと思い、服飾の専門学校にも行きますが、就職氷河期世代で結局フリーターになり、アルバイト生活で借金もあるような生活をしていました。しかし、妻との結婚を考えるようになり、27歳で一念発起して就職することになりました。父親や店の常連さんからいろいろとアドバイスを受けながら、どうしたら収入を上げることができるのかを考えました。その時は「やりたいこと」というよりは、「収入を上げるため」「家庭を安定させるため」にはどうしたらいいかを考え、サラリーマンで収入をトップクラスにするには戦略が大事だと考え、いろいろな仕事を分析した結果、不動産業界を選びました。
創業に至った経緯は昨年の創業事例集でも語っていただきましたが、改めてお伺いしていいですか?
一番の理由は、やはり子どもとの時間を大切にしたかったということです。不動産の営業は、基本、火水がお休みなんですね。土日は休めないので妻が一人で子どもを見ることになり、妻にも子どもにもストレスがかかっていました。土日に休める部署へ異動の希望も出してみましたが叶わず、収入は上がってもサラリーマンに自由はないですよね。その時に、たまたま父親の店の常連さんだったお客様が古くから吉祥寺にある不動産屋の二代目の方で、後継がいない。それで「そのお仕事を引き継がせてもらえませんか?」ということで、事業の継承へ向かうことになりました。同時に自分の会社も作り、自分の会社を経営しながら、継承へ向けて会社の仕事もお手伝いするというハイブリット起業です。それと、私は人生で一度だけ、諦めて後悔している夢があるんですが、若い頃にワーキングホリデーで海外に行きたかったのを、様々な理由をつけて諦めました。なので、自分の子どもが成長して、もし海外に留学したいとなったら、親として応援してあげたいと思います。留学を応援するにはお金も時間もかかりますので、自分で事業を作り成長していければ、その夢も叶うかなと思いました。不動産業界は、9割以上が従業員が10人未満で、今だに書類をメールではなくFAXで送るとか、IT化が一番遅れている業界なんですよね。所謂「町の不動産屋」さんの数が多くて、継承した会社もインターネットの回線を私が引いたぐらいIT化が進んでいなかったんです。その会社では店舗などの事業系の物件を扱っていますから、相手は「法人」なんですよね。ということは、当然、相手はIT化されていますから「FAXないんです」って言われちゃったり(笑)。ちょうど法改正などで手続きも煩雑になった時期で、いいタイミングで私がそこに入ってIT化のお手伝いをすることになったんですね。物件の動画を撮って保管しておくことで、退去時に揉めないような仕組みを作ったりもしています。写真を何枚も撮ってファイルに整理して保管するより、動画のほうがわかりやすいし楽なんです。
本を出すのは、どんなきっかけだったんですか?
子どものころから父親の店のお客様と会話をしてきたことで、年上の方とのコミュニケーション能力はあるほうだと思います。それによって、前の会社でも良い成績を残せたと思います。不動産のオーナーさんはご高齢の方も多く、特にこの業界はアナログでもあり、今後の仕事のことを考えると、「本」というアナログな形でPRするのがいいと考えました。名刺替わりにお渡ししていけば、当社を選んでいただきやすくなるのかなと。本を書くに当たっては、本を書くためのスクールにも通いました。そこでこれまでの自分の人生の棚卸しをしてみたところ、小学生の頃から焼き鳥屋を手伝ってきたという経歴は、実はすごく珍しく、人には真似できない差別化であり、出版社さんも「面白い」と言ってくれました。「吉祥寺」という街は全国で知名度が高い街ですし、「『吉祥寺の焼き鳥屋』をタイトルに入れましょう」ということで、出版が決まりました。自分にとっては、この本を書くことで吉祥寺の不動産マーケットの一角に進出したいという願いと、両親や妻や子どもを大切にしたいという思いも込めています。一冊目がそこそこ売れれば、二冊目、三冊目で不動産の話なども書いて、本業にも活かしていきたいと思います。「本」というアナログの媒体と、これからはYouTubeなども使って、団塊の世代とその子ども世代の両方を取り込んで、オーナーさんから依頼を受けることをメインにした不動産業をやって行きたいと思っています。オーナーさんから選んでもらえるように、まずは知名度を上げたいですね。
創業されてからもうじき3期目だそうですが、手応えはありますか?
地道に認識は広がっていると思いますが、正直、厳しいなと思うこともあります。オーナーさんはこれまで取引してきた不動産屋とのお付き合いがあるので、急には変えられないですよね。ただ、継承を進めている会社からのお客様の引き継ぎは順調に進んでいるので、「ユニバーサル・リアルティ」という社名も徐々に認識していただいてきているのかなと思います。不動産業はオフィスの形態にもいろいろ条件があるんですが、ここのKNラボは不動産の免許も大丈夫なのでよかったです。家も近いですしね。
玉岡さんはいろんな活動もされていますよね?
弊社は社会課題としてSDGsの活動もやっています。例えば「庭先があまっているならシェアサイクルの置き場所にしましょう。そうすることでその物件の広告にもなりますよ」というようなことや、「飲食店の空き時間をコワーキングスペースとして使う」というようなご提案もしています。先日は「就職氷河期世代」に向けたクラウドファンディングもやりました。短時間でできるアパートの清掃業務などの仕事をアプリでマッチングして、家に引きこもっている人や主婦の方が地域社会に出られるような、お仕事版のメルカリみたいなシステムを作った会社と提携し、ご提案しています。不動産オーナーさんには清掃業務にかかるコストを下げるメリットがあります。働き方に困っている方の支援というSDGs 活動と、不動産オーナーのコスト低減、相互にメリットのある事業です。シェアサイクルの推進もしています。武蔵野市は電車を使えば東西の移動はできますが、南北には動きにくいですよね。片道だけ自転車で行きたい時もあったりしますが、自分の自転車ではそうはいきません。街が活性化するためには、駅からちょっと離れた場所に面白いものがあって、そこに行くには駅からバス、タクシー、そこにシェアサイクルをプラスしたい。バスは決まったルートを走りますが、自転車はルートも自由でタクシーより安いです。コロナもあるのでバスには乗りたくないという人の需要もあると思います。今、全国で空き家が1000万戸あり、これからもっと増えていきます。新築は年間80万戸増えています。人口が減少して家が余る時代になると、オーナーさんは集客や売買のためのアイディアを求めると思います。将来的にはそういった全国のオーナーさんの悩みを解決するアドバイザー的な仕事もしたいです。
そういった活動を通して、地域への貢献もされているんですね?
武蔵野市にもサラリーマンの方はたくさん住んでいらっしゃいますが、サラリーマンは地元のJCも商工会議所も知らないですよね。サラリーマンの社会と地域社会はなかなか繋がらないですが、私は両方知ってるので、不動産を通して繋ぐ役割ができたりするのかなと思います。大手の不動産屋は担当者が異動になっても継続していけるようなシステムが出来上がっています。地域のイベントなどに協賛するのもお金を出すぐらいで、地域との接点はないですよね。私はその中間みたいな会社があってもいいのかなと思っています。弊社のミッションは「ときめく時間や場所のお手伝いをし、人・社会・自然へ、継続的に貢献すること」であり、ビジョンは「笑顔であふれる世界をつくる」です。ファーストプレイスが「家」であり、セカンドプレイスが「職場」、そして、サードプレイスとして「わくわくするようなお気に入りの場所や時間がある暮らし」をプロデュースしていきたいです。
(取材:いなだゆかり)
ユニバーサル・リアルティ株式会社東京都知事(1)第105485号・令和2年10月30日 『ビジネスで大切なことは |