司法書士深沢事務所
深沢 悠介(ふかざわ ゆうすけ)さん
どのような事業をされているのですか?
吉祥寺本町にて司法書士事務所を開業しております。司法書士という職業にあまり馴染みがない方も多いかと思いますが、弊所では主に相続による不動産の名義変更(相続登記)や遺言書作成サポート、成年後見申立書類作成などを扱っております。
その他にも不動産の売買・贈与に伴う不動産登記、会社設立・役員変更などの法人登記も扱っております。
最近世間で話題となっております「相続登記の義務化」についても、私たちのような司法書士の専門分野となっております。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
法律関係の資格を使って仕事をしたいと最初に思ったのが中学生の時でした。当時観ていたドラマの影響で、なんとなく進路を決めた記憶があります。初めて独立を意識したのは、一通りの作業が1人でできるようになったくらいの頃だったと思います。私の場合、過去に独立をしていた時期があったので、今回の独立が実質2回目になります。また今回の独立については時間的余裕もあまりなかったので、過去の経験を生かすくらいしか準備らしい準備はできていない状況でした。そういう意味では勢いや流れで独立してしまったのかもしれません。
過去に独立していた時は、独立を決めてから1年くらいの準備期間を設けていたと思います。その間に必要となる物品や費用、事務所の場所などを考えたり、業務に必要な書類や手続きの準備をしたり、実務・運営に関する知識を深めていたりしました。また、当時の職場で参考にできそうな点や、自分なら他のやり方の方が良さそうだと思った点を考えノートにまとめたりもしましたし、日常業務においても、割り当てられる案件を、独立後の自分ならどのように進めるか、依頼者とどのようにコミュニケーションを取っていくかなどイメージしながら業務を進めるようにしていました。そしてある程度の準備ができたら、あとは実際に動き出してみないと分からないこともあるので、独立してから必要に応じて対応していくしかないと考えていたところもあります。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
私たちの業界では、独立する前に数年ほど事務所に勤務し、そこで実務経験を積むのが多数派です。私もそのうちの1人でしたが、担当する案件が増えるに連れて長時間残業や休日出勤などしなければ対応しきれない状況が続いていました。
もともと相続業務や後見業務などのいわゆる「家族」に関する業務をメインにしたいと考えていた私は、サービスを提供する側である自分自身も家族との関係を大切にするべきだという思いがありましたので、家族と過ごす時間を確保したいと思っていましたが、なかなか状況的に難しく、思うようにはいきませんでした。
また事務所の規模や方針を考えると、この状況が改善されるイメージができず、このままでは家族との時間の確保どころか、自分が本来やりたいと思っていた業務への参入さえも難しいと判断し、改めて独立をすることになりました。
独立といっても始めのうちは知り合いの事務所の一部を借りて、業務委託というかたちでその知り合いの仕事を手伝いながら、自分の仕事もしていたような状態でした。その後次第にお互いの環境も変わってきたことから、新たに自分の事務所を設けることになり、完全に独立し現在に至っています。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
司法書士のような、いわゆる「士業」と呼ばれる仕事は、基本的に依頼者の代理人として仕事をすることになります。そのため依頼者本人が自身で行うこともできるのですが、その手続きの内容が複雑であったり聞き慣れない書類などを求められたりすることも少なくありません。申請先となる役所も平日の日中しか開庁していないので、一般の方ではどうしても対応しきれない場合がでてきます。
弊所では、そういった複雑な手続きや手間をすべてまとめて代理させていただきますので、依頼者自身の負担を極力減らすことができます。もちろん依頼者の中には日中に時間が取れない方やご高齢の方も多いと思いますので、打ち合わせについても夜間の時間帯や休日対応もしておりますし、ご自宅や最寄り駅などへの出張サービスも行うようにしております。
特に私がメインとしている相続業務は、大切な人とのお別れが伴います。そしてそのとき依頼者は、心身共にとても不安定な状況だと思います。そのような状況だからこそ依頼者の方にはできる限り負担をかけず、安心感を提供できるよう心がけております。
起業して感じることは?
時間管理やスケジュール調整を自分ですることができるという点は良かったと思います。簡単な作業や勉強でしたら気分転換も兼ねて近くのカフェや自宅ですることもできますし、ちょっと頑張り過ぎたと思ったときは、翌日少し休む時間を設けることもできます。もちろん忙しいときは一日中事務所にこもって作業することや、休日に仕事をせざるを得ないこともありますが、自分の判断で平日に休むこともできます。この辺りは私の性格にも合っていたかなと思います。
反対に大変だと思ったことは、仕事のことを考える時間が山ほど増えたことです。これは個人の性格も影響すると思いますが、気付けばいつでもどこでも仕事のことを考えているなんてことがよくあります(そのため家族で過ごす時間に影響が出ないよう気を付けています)。
またそれに関連して、最近「ちゃんと食べて、ちゃんと寝る」ことの大切さと、それを実行することの難しさを感じました。これはどの業界にも通じるものだと思いますが、やはり体調管理は意識的に気を付けるべきだと改めて感じます。
起業を志す方へのアドバイス
私自身もまだまだアドバイスできるほどの立場ではありませんので、経験談として…。
独立するといきなり大海原へ放たれたように不安になることもあるかと思います。そんなときのために相談相手を見つけておくことをオススメします。それは家族や友人といった半径数メートルくらいの身近な存在でも大丈夫ですが、特に同業者の相談相手がいたらより良いかなと思います。
私も本当にたくさんの方に支えられながら、今日を過ごしていますが、きっと独立・起業している方の多くは、みなさん同じだと思います。
アドバイザーからの一言深沢さんの「家族」に対する熱い想いを感じる体験談です。仕事においても「家族に関する業務」、つまり「相続業務・後見業務」ということで、その姿勢は変わることなく、独立のきっかけにもなりました。「士業」は理解しにくい職種ではありますが、深沢さんのお話から、司法書士の職務の一部が家族に密接に関連していることがわかります。 独立を2回経験された経緯について、紙面の制約もあり深く触れられていませんので、機会があればぜひお伺いしたいと思います。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |