株式会社ねこ工房
長谷川 大樹(はせがわ だいき)さん
猫の飼い主さんのお悩みを解決
猫専用の脱走防止アイテムの製造・ネット販売を行っています。玄関からの飛び出し防止、火や刃物の危険があるキッチンへの侵入防止、仲の悪い猫や同居人と生活スペースを分ける目的など、それぞれのご家庭の悩みに応じた方法でご使用いただいています。
毎日YouTubeに愛猫の動画をアップ
私は就職の経験が無く、起業前はインターネットカフェの深夜アルバイトをしていました。元々、会社の業績を上げるために必死に頑張れる性格ではなかったので、自分で事業を興すまでの繋ぎとして時間を切り売りするアルバイトという働き方を選択することにしたのです。空いている時間はマーケティングやコピーライティングを独学で学び、そこから思い付いたアイデアを実現するため、実践しながら必要なスキル(プログラミング、イラストレーターやフォトショップなどの描画ソフト、プレミアプロやアフターエフェクトなどの動画製作ソフト)を必要な分だけ身につけていきました。商品の販売を決めてからは、毎日YouTubeに愛猫の動画をアップすることで、ちゃんと猫を飼っていて怪しい人では無いことを証明し、信用してもらえるよう努めました。高額な商品を全く知らないショップで購入してもらうためにはそのくらいする必要があると思ったからです。
ないものは自分で作るしかない
きっかけは愛猫の脱走です。
過去に何度か2階のベランダに出したことがあり、今まで逃げる素振りは一度もなかったのに、その日は自分より5倍以上も高いフェンスを軽々飛び越えて私の前から消えてしまいました。すぐに下を確認しましたが姿が見えず、慌てて一階から外に出て近くを探し回りました。その時間は30分だったのか1時間だったのかパニックだった私にはわかりません。探しに探した結果、運良く私は愛猫を見つけることができました。そこでめでたしめでたしとはならず、また脱走したらどうしようという恐怖が襲ってきました。すぐにネットで猫の脱走防止商品を探しましたが見つからず自分で作ることにしました。また同時に、自分の他にも同じような思いで困っている人がいるはずだと考え、誰でも簡単に組み立てられる脱走防止扉を販売しようと決意しました。試作品をいくつか製作し、SNSやブログで紹介したところ、やはり欲しいという声があったため販売に向けて準備を始めました。最初はコストのなるべくかからないヤフーショッピングで製作代行のような規模から始め、徐々に規模を大きくしていきました。
「仲間」という感覚でお客様と関わる
最も重要だと感じているのは「猫が大好きで自分自身が飼っている」ということです。単に販売者とお客さんという関係ではなく、「仲間」という感覚を持ってくださるお客さんが多くいらっしゃいます。電話で猫に関する相談事や商品購入の経緯を説明していただくなど長話をしてしまうことも少なくありません。有難いことにお礼のメールも数多くいただきます。このような関係でお客さんと関わることが出来ればトラブルも少なく円滑に商売を続けられるのだと思います。また、技術面での強みは「レビューを集める施策をしていること」にあると感じています。商品に満足している人よりも不満を持ち、怒っている人の方が行動を起こしやすいため、どうしても施策無しで付くレビューはネガティブなものが多くなってしまいます。そこで当店ではキャッシュバック制度を設けることで、満足しているお客さんがレビューを書くという行動をとるきっかけを作るように工夫しています。
やる事全てが自分の人生への投資
起業して良かったことは、自分の興味のある人と深く関わることができ、反対に興味の無い人や付き合いたくない人と無理に関わる必要がないことです。責任は全て自分にあるにせよ、何でも好きな仕事を選んですることが出来ます。関わる人、やるべき仕事を全て自由に決めることができます。しかし、何の制約もない自由な起業家故に、起業したての頃というのは焦りから休みを犠牲にして仕事をしてしまいがちです。その点、私は大好きなことで起業することが出来たので、仕事とプライベートの境目を作る必要がなく、やる事全てが自分の人生への投資だと考え日々行動しています。今の事業を始める前は全く違うことをしていました。関心のあることではありましたが、経験の無いことを本やネットの知識を頼りに、「儲かりそう」という理由だけをモチベーションに事業を続けていました。しかし、商品が売れても虚しさだけが募り、とてもやりがいを感じられるものではありませんでした。そのような経験から、自分が経験したこと、好きなことで起業することを選択して良かったとつくづく思います。
起業を志す方へのアドバイス
私からのアドバイスは、自分でやらなくてもいいことは一切しないと決めてしまうということです。
起業家の理念やエネルギーは起業家本人にしか無く、起業家はゼロから何かを始めることに出来るだけ力を注げるような環境を目指すべきだと思います。自分が出来るような事は、他にも自分より上手く出来る人が山ほどいます。誰かが出来るものは誰かに任せて、あなたにしか出来ない事に全力を注いでください。また、事業の準備のために色々学んだと書きましたが、ホームページを作ることもバナーを作ることも、YouTube用の動画を編集することも、今はクラウドソーシング系のサイトがたくさんあるのでそれを使わない手はないです。スキルがあっても損はないですが、悠長に勉強している内に誰かに先を越されます。商品やサービスを市場に投げて、売れるか売れないかを判断する。売れなければ次の何かを作る必要があるのですから、この判断まで如何に早く辿り着けるか、それが最も大事なことだと思っています。
アドバイザーからの一言自分自身が不安に思ったこと、不便に感じたことこそに、新事業や新商品のヒントはあるものです。「いつか起業しよう」と立てていた長谷川さんのアンテナが、それに反応したのでしょう。また、独りよがりにならず、SNSやブログで周囲の声を確認してからスタートしたことが、現在につながっていると言えます。大好きなことで起業する・・・長谷川さんの「やることすべてが自分の人生への投資」という言葉に、大変説得力を感じます。 株式会社マネジメントブレーン代表 姫野 裕基 |