株式会社アイベジ
中島 健吾(なかしま けんご)さん
どのような事業をされているのですか?
「バニラビレッジ – Vanilla Village -」というブランドの展開を通して、インドネシア産バニラビーンズ及びそのオリジナル加工品の小売と卸売を行なっています。インドネシアの農村の生活水準を改善するために、現地の農産物であるバニラビーンズの販路拡大により貢献することを目的として運営しています。
いつから起業を意識されましたか? どのような準備をしましたか?
大学院の博士課程に在籍していたときからです。研究生活も楽しく充実していたのですが、漠然とですが起業に魅力を感じていました。すぐに起業することも考えていましたが、社会人の経験が無かったため、農業分野で上場を目指しているようなベンチャー企業でビジネスのスキルを身につけたいと考えるようになりました。その後は就職をして約3年間の社会人経験を積みながら、平日の朝と夜、土日は起業の準備を進めていました。当時は「小さくやってみること」を意識していて、勤め先を業務委託契約に切り替えて個人事業主として開業後、すぐに実践できそうなアイデアは実行に移しながら、トライ&エラーを繰り返していました。日頃から事業のアイデアや施策を考えつく度にエクセルシート上で記録していて、それが結果的に起業の準備としては有効だったと思います。また必要な会計や法律などの知識は調べてみて、分からない場合は専門家の方に聞いて学習していました。
起業のきっかけはなんですか?なぜ起業したのですか?
起業のきっかけは、大学院生の時にナミビア共和国の研究機関で研究をしていた頃です。学生の頃から国際協力を志していたのですが、当地域の干魃による農産物の被害に着目して、主食穀物であるトウジンビエへの干魃被害を緩和しながら増収も達成し得る農業技術の開発を目標にして研究を行なっていました。当時は研究者として途上国の支援に貢献したいと考えていたのですが、持続的かつ効果的な途上国の支援には、「都市と農村をつなぐ」ような、その地域の隔離された経済圏から世界へと拡大される流通システムの構築が重要ではないかと考えるようになりました。今となっては、博士の学位を取得して研究者になってからでも、プロジェクトに参加したりすれば実現できないわけではなく、研究者の道を辞める必要は無かったとも思いますが、当時は「自分で流通の仕組みを作ってみたい」と思ったのをきっかけに、国際協力と農業の分野で起業を視野に入れるようになりました。
あなたの事業の強み、アピールポイントは何でしょうか?
原材料にこだわりを持つ店舗や一般消費者のニーズを満たすために、天然香料のバニラビーンズ、完全無添加な天然バニラ製菓材料やシロップを提供しています。2021年度は楽天ランキングで6冠を獲得することができ、これまでに一般消費者は約10000組、法人と店舗は約190組に提供してきました。また商品の製造工程にも工夫をしており、バニラビーンズの場合は、香り付け工程の期間を通常の約2倍で処理することで、オリジナルの深みがあるバニラの香りが特徴となり、お菓子にしっかりと着香します。また完全無添加・バニラピューレは揮発成分がないため、加熱しても香りが飛ばず焼き菓子におすすめです。これら商品は顧客の悩みや要望をしっかりと把握した上で開発及び提供をしており、事業の強みとなっています。また事業に付随する強みとして、「社会的意義のある事業背景」も挙げられます。インドネシアの農村の⽣活⽔準を改善するために、現地の資源であるバニラビーンズを世界へと積極的に販路拡⼤を⾏っていくことで持続的な貢献を⾏なっています。また市場では廃棄されてしまう規格外のバニラビーンズも、弊社で安価に買い取りを⾏い、加⼯商品として有効利⽤しており、⽣産者にも環境にも配慮した取り組みをしています。結果として事業の背景や取り組みに共感いただいており、応援されやすい事業であることも強みです。
起業して感じることは?
良かったことは、会社員では出会えないような社長様や実績のある方とお仕事する機会が増えたことです。弊社は小さな会社ではありますが、代表という肩書きを持っていれば、会社員の時よりも話を聞いてくれやすいと感じています。そこに若さがあればアドバンテージにもなるので、年上の先輩経営者の方々も親身に相談に乗ってくれる方もいるため、20代で起業して良かったと思っています。逆に悪かったことは、経済的な安定は保障されていない点です。会社員だと毎月固定給がありますが、独立すればありません。また事業が大きくなってくると資金繰りも大変になります。起業された方は誰もが持つ悩みかと思います。ただ最低限の生活費に関しては、継続して収入が入るビジネスモデルを築くことができれば問題はないため、起業したての頃は業務委託の仕事を受けるなどリスクヘッジをしっかりとすれば大丈夫だと思います。また事業資金は創業融資などの制度を活用して確保することも良いと思います。お住まいの市区町村のあっ旋制度などを利用して低金利で借りられる方法もあるので調べてみると良いと思います。結論として全体的には良かったことが多いですし、やっぱり自分の裁量で仕事を進めることができるのは、起業の醍醐味であり、非常にエキサイティングな毎日が送れるので満足しています。
起業を志す方へのアドバイス
やってみることが大切だと思います。机上で考えたり、調べたりするよりも、小さくでも行動に移してみると、早く色々なことを学ぶことができると感じます。そうして得た学びは大きくて貴重です。今の職場で働きながら副業が可能な方は始めてみるのが良いと思います。また会社の設立や経営についての知識が必要な場合は、専門家の先生に相談して正確な情報を得ることも大切です。事業が軌道に乗るまでには大体2~3年の月日が必要なケースが多いかと思いますが、ぜひコツコツと継続してもらいたいです。私自身も精進して頑張ります。
アドバイザーからの一言フェアトレードの素晴らしい事例です。仕入れて加工、販売するだけでなく、インドネシアの農村の生活水準を持続的に改善することを視野に入れ、さらには環境にも配慮した取り組みは、ご本人のおっしゃる通り社会的意義がありますね。いわゆる「三方良し」のビジネスモデルになっています。時間の有効活用や自治体の制度の利用など、用意周到にことを運べるところも中島さんの強みです。研究者の道を辞めて踏み出した覚悟も、中島さんのパワーになっていることでしょう。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |