Miジャム
伊藤 理子(いとう みちこ)さん
https://mijam.base.shop/
https://www.facebook.com/mijam1616/
生産者の顔がわかる季節の果物のジャムを手作りで
季節の果物のジャムを手作りして、イベントやネットで販売しています。個人経営ならではの、他ではあまり扱われていない多種多様なジャムを、お客様に楽しんでいただけていると感じるのが一番の喜びかもしれません。地元の農家さんや地方の農家さんとの繋がりも広がってきて、生産者の顔がわかる果物のジャムはお客様の反応も違うなと実感しているところです。
シェアキッチンで自分の工房を持つ夢が現実に近づいた
ジャムの作成量が趣味の範囲を超えてきて、友人や親戚におすそ分けするだけではさばけなくなってきた頃、友人たちから「売れると思うし、買うよ。もらうより買いたい」と言われるようになりました。受け流さず意識し始めたのが3、4年前くらいだったと思います。食品の場合販売するためには、自宅ではなく営業許可を取った場所で製造することが必須ということを知っていたので、現実的ではないと思いつつ、マルシェに参加するくらいなら楽しいかも。と「食品衛生責任者」の講習を受けて資格を取得しました。ジャムを制作する場所として、シェアキッチンを借りました(武蔵野市MIDOLINO_さん)。そこで業務用と家庭用の機器の使い勝手の違いや、販売にあたっての衛生管理のノウハウを学びました。自宅で作るよりも安全で集中できる環境に魅せられて、自分の工房を持つことが夢よりも現実に近づいたと感じました。今の工房は、雑居ビルの一室ですが住居用に貸し出されていたものです。保健所の方に相談しながら必要最低限と思われる工事をし、菓子製造業の営業許可を取りました。作成準備から販売までの作業を一人で行うため、作業中の体への負担をなるべく減らすよう、作業台の高さや温度湿度の管理、器具の使い心地など、小さなことでも工夫して改善するよう心がけています。
できなくなったらいつでもやめよう
起業という言葉は、もっと難しい事だと思っていました。やってみてから「これは起業だ」と気が付きました。ジャムを売ってほしいと言われて、応えるためには工房を構える必要があり、工房を維持するためには売り上げを上げなければいけない。片手間ではとてもやっていけない。そしてやっぱり、たくさんの種類の果物を煮てみたくて、それをいろんな人に食べてもらいたかったのです。それはどこかお菓子屋さんに就職して働くということではなくて、自分のために場所を作ることに他なりませんでした。それから周りの人たちから創業スクールや相談できる機関がいろいろあることを教えてもらい、できる範囲で参加したり学んだり。やることがどんどん増えて頭はこんがらがっていきましたが、何とかなるような気がしていました。中年になってからの起業で、できなくなったらいつでも止めようと思えたし、思いとどまる要素もなく、周りがおおむね好意的に協力してくれたのが大きかったと思います。青色申告会に入会して昨年の確定申告をしたときに、それまでの給与所得との違いを見て、改めて起業したんだなと実感したものでした
量産はできないけれど種類はたくさんある
私の強みは変わった果物のジャムや工夫したミックスジャムを煮られることです。個人で制作しているので、煮たいだけ煮られてしまう。必然的に種類が増えてゆきます。それこそが起業した一因でもありますし、お客様が注目してくださるところでもあります。最近はスーパーでも果肉が多いジャムや砂糖を使わないジャムなどお客様のニーズを考えた商品が数多く出ていますが、それ以上に変わったものがあることを喜んでもらっています。量産はできないけれど種類はたくさんある。同じジャムでも果物の品種や熟れ具合でジャムの味が変わります。一期一会感がMiジャムの楽しみ方だと思っています。また、同じように小規模で活動されている方とのコラボレーションが気軽にできることも強みです。そのような出会いから希少な果物に引き合わせていただいたりすることもありました。今後もいろんな方と出会って繋がっていくことで、ジャムの世界が広がる手ごたえを感じています。
続けることを頑張っていいんだと実感
月並みですが、起業してもしなくても、成功や失敗があるし、仲間もいるし、孤独にもなるということがわかりました。今回のコロナ禍でイベントがどんどん中止になり、ほぼ引きこもりのような状態で体調を崩すことがありました。何度も「止める」という事を考えましたが、逆に応援してくれる人、手伝ってくれる人が現れて驚きました。今までだって、一人でなにもかもやっているわけではなく、いろんな人に助けられているということは知っていましたが、よく分かったというか腑に落ちたというか、応援されているし、続けることを頑張っていいんだと実感したのです。それから勤めているときにもそうだったことが分かったのです。悪かった、失敗だった、と思うことは特にありません。
起業を志す方へのアドバイス
どんな理由で起業を決めるかは人それぞれだと思います。迷うことがあるのも普通です。やってみたい、やってみようと思うなら進めばいいと思うし応援したいです。
コツは勝手に自分を失格にしないことと、誰かを頼ること。追い詰まったと感じた時に一歩踏み出すための余裕を生んでくれます。
アドバイザーからの一言気が付けば起業していた伊藤さん(笑)。「これは起業だ」というひと言がとても印象的です。ご自身の想いの実現に、起業は必然だったのでしょう。「趣味が高じて仕事になる」とは、よく耳にしますが、実際には趣味の範囲を超えられないケースのほうが多いのではないでしょうか。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |