株式会社マネジメントブレーン
姫野 裕基(ひめの ゆうき)さん
いつ創業し、どのような事業をされているのですか?
2019年4月に株式会社マネジメントブレーンの代表取締役に就任し、現在に至ります。弊社は「創業支援を通じて地域産業の振興に寄与する」ことを理念に活動しています。現職は二度目の事業承継であり、血縁や雇用関係のない第三者承継です。私が初めて創業を経験したのは2000年。大企業を退職し、ITバブル期に仲間と立ち上げたITベンチャー。後輩が社長、私は営業責任者として参画しました。その後、2008年にマーケティング教育企業を事業承継、2009年にはたい焼き店、2011年には化粧筆店の開業も経験しました。
創業のきっかけを教えてください。またなぜ創業したのですか?
私はこれまでに3回の創業と2回の事業承継を経験してきました。きっかけはそれぞれ異なりますが、共通しているのは「チャレンジ精神」です。大企業で営業職として8年半勤め、仕事に面白さを感じ始めた頃、モノを売るだけの営業から脱却するためにマーケティングを学びました。20代後半でビジネススクールに通い、中小企業の経営者に出会ったことで「自分も会社を経営したい」と強く思うようになりました。ちょうどITバブルの最中であり、仲間と最初の起業に挑戦しました。大企業を辞めるには大きな勇気が必要でしたが、チャレンジ精神が勝り、家族を説得して踏み出したのを覚えています。その後、マーケティング教育企業を事業承継。再度の独立でたい焼き店や化粧筆店の開業も経験しました。決して順調なことばかりではなく、挫折と挑戦の繰り返しでしたが、その一つひとつが自分の幅を広げたと思います。現在の会社は二度目の事業承継であり、私にとっては、これまでの仕事の集大成となる事業です。先代とは20年以上の関係ですが、2009年から独立して活動する中で協働してきたこともあり、承継を打診されたときには迷わず決断しました。これまでの経験を活かし、地域の中小企業の発展や次世代の起業家育成に力を注ぎたいと考えています。年齢的にもこのタイミングが最適であり、「最後から二番目のチャレンジ」として、地域の未来に貢献できるよう取り組んでいます。
創業してしばらく経ちました。実際にやってきてどうでしたか?
大企業を退職してから気がつけば25年。振り返ると、正直に言って想定外のことばかりが次々と起きてきました(笑)。ただ、今の会社を事業承継してからは、大きな苦労はあまり感じていません。おそらく、それまでの経験が「苦労の感度」を程よく下げてくれたのだと思います。ちょっとやそっとのことでは「これくらい大したことないな」と思えるようになりました。私がこれまで経験してきた経営の試練は、大きく分ければ「お金のこと」と「人のこと」です。どちらも自分の至らなさや判断の甘さから生じた面も多く、書面で語り尽くすのは難しいですが、たとえば社員との信頼関係づくりに苦労したり、お金の管理面で思わぬトラブルがあったり、思いがすれ違って厳しい言葉を受けたり、資金繰りに追われて税務署に何度も足を運んだり、売上が急に止まり対応に追われたりしたこともありました。思い返せば小さなことまで含めて、本当に多くの学びの機会があったと思います。もちろん、すべて最終的には代表である自分の責任ですが、こうした数々の事件(?)のおかげで鍛えられ、学びの機会も得られました。結果として「想定外には慣れてしまった」のかもしれません。苦労を重ねた分だけ視野が広がり、経営者としての度量が養われているのなら嬉しいです。そういう意味で、今では当時大変だった出来事すら、貴重な財産だと思えるようになりました。
苦労や想定外のことをどう乗り越えましたか?
振り返れば、私が困難を乗り越える上で常に意識していたのは「真摯に向き合うこと」、「損得より善悪を優先すること」、そして 「あきらめない気持ち・根気」です。トラブルや課題に直面したとき、人はつい「もっと簡単に解決できないか」と考えてしまいます。実際、私自身も最初はそのような発想で動き、かえって状況を悪化させたことがありました。そこで学んだのは、安易な近道を探すより、正面から向き合う方が結局は早いということです。特に大切だと実感したのは「善悪を基準に判断する」姿勢です。損得勘定に流されると、一時的には得をしたように見えても、最終的には信頼を失い、組織や人間関係が崩れてしまいます。「これは正しいことか、間違っていることか」という軸を持つことで、最良とは言わないまでも、ある程度良い結果へと導かれたと思います。もちろん経営の現場では相手があることが多いため、時には厳しい決断を下しながらも、相手の立場に立ち「真摯に向き合うこと」が欠かせませんでした。この姿勢を続ける中で、信頼関係が築かれ、次の協力や支援につながることも少なくありません。こうした考え方がどこで身についたのかは定かではありませんが、ある経営者の講演か書籍で出会った言葉に強く共感し、自分の指針となったと思います。今でも私は「善悪で判断し、決して諦めない」という姿勢を心がけているつもりです。
今後の展開を聞かせてください。
まず、私が代表を務めている間は、事業の方向性を大きく変えるつもりはありません。地域、特に武蔵野市の産業振興や経済の活性化に貢献することを中心に据えています。地域企業の盛衰は、そのまま地域の活力に直結します。現在は創業支援を通じてこの理念を実現していますが、もう一つの柱として「事業承継」の支援も重要だと考えています。日本の人口のボリュームゾーンは団塊世代であり、地域の中小企業経営者も同様です。これからは中小企業の事業承継が、今以上に増えてきます。地域経済を支えてこられた先輩方の事業承継を支援することも、地域活性化の一助になるでしょう。特に弊社は創業者のネットワークを持っているため、親族や従業員に限らない「第三者承継」を支援できる点が強みです。弊社の先代(現会長)から私への事業承継は2019年でしたが、それ以前にも数年間の準備期間があり、2019年から2021年までは二人で代表を務めました。時間をかけて丁寧に承継することの重要性を身をもって経験しています。将来的には、私自身も同じような年代で同じプロセスを経て次世代に事業を引き継ぎたいと考えています。還暦まであと数年ですし、ボヤボヤしている暇はありません(笑)。その後、75歳以降は個人事業主に戻って「最後のチャレンジ」を楽しみたいと思っています。
起業を志す方へのアドバイス

2025年の夏は統計開始以来最も暑い夏でした。2024年の出生数は70万人を割り、160万人の方が亡くなりました。35万人の外国人流入はあるものの、人口減少は止められそうにありません。一方でAIやロボット、DX、ゲノムなどテクノロジーは急速に進化し、大変革の時代を迎えています。歴史を振り返っても、大きな変化は同時に大きなチャンスです。創業は変化をチャンスに変える手段であり、自己成長と社会貢献を同時に実現できます。「創業を志す方へのアドバイス」とありますが、自分自身への言葉として心に留めています。
アドバイザーからの一言マネジメントブレーンさんとは、静間先生が代表を務めていらした頃から15年ほどお付き合いさせていただいております。私は仕事柄、事業承継の場面に立ち会うことが多いのですが、マネジメントブレーンさんのように理想的に承継が行われた事例は多くありません。お二人はそれぞれ異なるお人柄やカラーをお持ちですが、その違いが見事に融合しています。理念を共有し、時間をかけて丁寧に承継を進められたこと、そして深い信頼関係があってこその結果だと感じます。マーケティングを専門とされ、発信力のある姫野先生のもと、今後も発展し武蔵野市の産業振興に貢献されることを心より祈念申し上げます。 髙谷行政書士事務所 髙谷社会保険労務士事務所 所長 髙谷 桂子 |









