三鷹の森法律事務所
薦田 知浩(こもだ ともひろ) さん
三鷹の森法律事務所の薦田知浩さんは、2020年の創業事例集に「創業者」としてコラムを寄稿していただいた、相続や離婚問題など、主に生活に根ざした分野に注力されている弁護士さんです。それから5年を経て、現在のお仕事の状況を伺ってみました。
創業されてご苦労もあったと思いますが、いかがでしたか?
苦労がなかったわけではないですが、基本的にはいい感じで進んでいると思います。2018年に三鷹の産業プラザにオフィスを開設しましたが、最初は本当に縁もゆかりもない土地でしたし、漠然とした不安はありました。同じ三鷹産業プラザにオフィスを構えられている社労士の先生や行政書士の先生に、三鷹商工会をご紹介いただいたり、お仕事をご紹介いただいたりと、周囲の方にだいぶ助けていただきました。コロナ禍に少しお客様が減る時期もありましたが、コロナが収束してからはまた順調にお客様も増えています。最近はいろんな方との繋がりができてきて、知り合いの方からのご紹介も増えてきました。コロナ禍でなぜ弁護士の依頼が減ったのかは謎です。かえって増えてもおかしくないと思うのですが、不思議ですね。
なぜ三鷹にオフィスを開設されたんですか?
元々は千葉に住んでいたのですが、三鷹は「憧れの地」でした。「三鷹」って名前がかっこいいですよね(笑)。独立する前に、三鷹駅の乗降者数や三鷹市の人口、10万人当たりの弁護士の数なども調べて、三鷹で開業することを決めました。事業を始める時は、「立地」がとても重要だと思います。一度そこに事務所を開設したら、簡単には動けないですよね。なので、それなりにリサーチはしました。吉祥寺は弁護士がいっぱいいるのですが、三鷹はそこまではいないのと、裁判所は立川と霞ヶ関なんですが、特快の止まらない吉祥寺よりも、特快の止まる三鷹からのほうが、どちらも行きやすいのがいいですね。
集客はどうやってされましたか?
当事務所は「離婚」と「相続」をメインに扱っていますので、ホームページを見て来られるお客様も多いです。最初は自分でホームページを作っても検索で上位に表示されないので、「弁護士ドットコム」というポータルサイトに登録して、そこに自分のホームページのURLを貼って、ポータルサイトから自分のホームページに来ていただけるようにしました。それで検索結果の順位もだんだん上がってきました。当時は三鷹の弁護士が少なかったので、三鷹で弁護士を探している方には目に付きやすかったと思います。ホームページからお問い合わせいただいて、面談して、ご依頼いただき、問題解決して事件は終わりますが、終わった後に、グーグルの口コミを書いていただくようにお願いしています。そうすることで、それを見てくださった方からまたお問合せをいただくという、良い循環ができてきました。
なぜ「離婚」と「相続」に特化されているんですか?
弁護士なので法律全般には精通しているのですが、やはり「得意分野」があって、他の分野はよくわからないところもあったりします。たとえば 「M&A」などは奥が深くて工数もかなり多く、とても一人では太刀打ちできません。また、「独占禁止法」や各業界の業法についてもわからないところがあります(ただし、建設業は顧問先が複数ありますので、建設業法には精通しております)。そういった分野は企業法務をやっている弁護士さんが扱われる分野で、その中でも大手企業を扱う方と中小企業を扱う方がいます。大手企業だと、それぞれの専門分野を扱っている複数の弁護士さんが所属されている事務所が対応します。それはだいたい都心のほうにある弁護士事務所です。よくわからない分野はどこに落とし穴があるかわかりません。依頼者の方の人生がかかっておりご迷惑をおかけすることはできません。私のように一人でやっている弁護士は、分野を絞らざるを得ないと思っています。「離婚」や「相続」は独立する以前の勤務弁護士の時から積み重ねた経験があるので、今もその分野に注力しています。
薦田先生がお仕事で心がけていることは何ですか?
ご依頼いただいた仕事は一件一件、丁寧に対応することを心がけています。依頼者の方には精神的なご負担がかかっていますので、法的には関係性が薄いとしても、お気持ちをゆっくり聞かせていただき、そのお気持ちに沿った解決に少しでも近づくよう努力させていただくなど、精神的な負担が少しでも軽くなるように心がけています。弁護士との相性も大事です。弁護士に依頼したものの、その弁護士との相性が合わないというご相談をしばしばいただきます。そのため、新規ご相談者の方には、複数の弁護士にご相談いただき、そのなかで相性の良い弁護士に依頼するという視点をもつこともおすすめしています。
丁寧に対応するためには時間を要しますので、私のキャパシティの問題で、お受けする案件を制限させていただくこともあります。
今後の戦略はありますか?
地元の方に対する認知を増やしたいので、最近、バス広告も出し始めました。出してすぐに問い合わせが来ることはないと思いますが、日常的に目に触れていれば、何かあった時に思い出してもらいやすいですよね。産業プラザの6Fと市役所にもデジタルサイネージを出させてもらっています。インターネットではなく、そういった地元の媒体に広告を出していこうと思っています。あと、商工会議所などの会員になっていますが、そういった集まりで個人的な繋がりを広げて行きたいと思っています。今は子どもが小さいのでなかなか顔を出すこともできずにいますが、ゆくゆくは地元に貢献していきたいという想いもあるので、徐々にそれができるように準備しておきたいです。
雇用は考えていますか?
拡大思考がないので、積極的に弁護士を雇用することは、今はあまり考えていません。自分が依頼者の方と直接お話をすることで、そのお客様のお役に立てているという実感が持てていますが、雇用した弁護士に仕事を振ってしまうと、その実感が持てなくなってしまうような気がしています。なので、今は自分ができる範囲でやれることをやっていきたいです。今後の事業の拡大という観点が全くのゼロとはいいませんが、ただ、それよりも業界に対する恩返し、ペイフォワードという意味で、将来的には後進の弁護士を雇用したいと考えています。私も司法修習時代や勤務弁護士時代に先輩弁護士のお世話になったので、それと同じことを後進の弁護士にしていきたいと考えています。
創業予定の方や創業された方に、弁護士としてのアドバイスはありますか?
精神的な負担を減らすために、弁護士を使って欲しいですね。経営者の方はどなたも不安を抱えていらっしゃると思います。飲み会などで友人に話せることもあるとは思いますが、そこで話せる内容には限度があると思います。弁護士には守秘義務もあり、何でも話していただいて大丈夫です。顧問契約であれば、法律的な問題ではなくても「経営者としてこう考えているけれど、どう思う?」というようなお話をしてくださってもいいのです。そういうことが現在のお客様に対してお役に立てているところかなと思います。あと、大事なことは「付き合う人は選んだほうがいい」ということですね。近頃は出資詐欺的な被害もあったりします。話をしながら、じっくり相手を見極めることが大事です。
「顧問弁護士」としてのお仕事はどんな内容ですか?
顧問弁護士の仕事は、一般的には「何かお困りのことがあればご相談くださいね」という形式が多いと思いますが、私は月に一度会社を訪問させていただいて、こちらから日常的に問題になりそうな事柄の情報提供も行っています。小規模な会社さんが多いので、たとえば 「社長さんが亡くなった時に備えて、今からこういうことをしておくといいですよ」というような情報を提供しています。ただ、現在の顧問契約は5、6社程度なのでそれも可能ですが、10社以上になってくると、それが不可能になるかもしれません。今後どうするかは悩ましいところではあります。企業に対しては、訴訟に至る前の段階で、たとえば、先方に誤解をされないようなメールの返し方などをアドバイスすることが多いです。問題が起こりそうな時に、できるだけ訴訟にならないで解決することが大切ですね。
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