株式会社COAROO
池 成姫(ちー そんひ)さん
いつ創業し、どのような事業をされているのですか?
当コアルー社は「コアルーバッグ」を専門に企画、製造、卸、販売をしています。創業は2010年11月。最初は子育ての最中でもあり、自社企画ではなくライセンス事業を目指していたため自宅の一室を空け自己資本ほぼゼロの状態で会社をおこしました。現在は吉祥寺の中道通りの一角にショールームを兼ねた事務所があります。ネットショップの他、テレビショッピングやカタログなど通販会社との取引、一部ライセンスの提供やコラボ商品も作っています。
創業のきっかけを教えてください。またなぜ創業したのですか?
この仕事の前は特許翻訳という特殊な仕事が主でした。普段から工夫したりアイデア出しが好きだったせいか、特許について興味を持つようになっていた頃、子育てで増える荷物と格闘しているうちに閃いた「新しい掛け方(5way)」が可能なショルダーバッグを発明したのです。ショルダーバッグから簡単にリュックに変身できて「前抱え」にもなることで色々なシーンでラクになる…それを「コアルーバッグ」と名づけました。最初はバッグメーカーにアイデアを提供できればと思っていたのですが、新しいアイデアや外部からの提案には非常に閉鎖的だということが分かり自分で作ることにしたのです。特徴あるアイテムとしてメディアにも取り上げられ様々なコンテストでも受賞する幸運も続きました。でも創業時の計画は非常に単純な発想だったので、作ることにも売ることにも何一つ分かっておらず全くの下手なやり方でした。話題性さえあればこの仕組みを取り入れてくれるメーカーも現れるだろうし、ライセンス契約で収益も上がると軽く思うほど愚かなものでしたね。
創業してしばらく経ちました。実際にやってきてどうでしたか?
でもそう簡単に物事は進まない。おまけに創業してメディアに取り上げられ受賞の栄光を浴びていたちょうどその頃、東日本大震災!世の中は急に動かなくなり新しいアイデアに目を向けてくれない雰囲気でした。創業して間もないと実績も信用も無い、業界の事情やつながりも皆無だったので販路開拓は空振りばかりでした。展示会に出たりホームページをキレイに作り直したりして出費はかさむものの、そう簡単に取引は成立しません。それでも時々頂く販売の場は貴重な経験でした。物を売ることがこれだけ大変で大事な作業だったのかと分かるようになりました。お客様の声が開発に生かせる重要なデータになったり、接客の経験はホームページ作りにも役立ちました。デザイナーやバイヤーは各自の専門性は高いものの、自分が考えたこの「コアルーバッグ」に関しては誰も詳しい人はいない。自ら専門性を高める必要があったのです。また、自分の中にいくらノウハウが蓄積していたとしても、それに耳を傾けてもらえるためには実績が必要です。この一連の営業活動には思ったより長い時間とたくさんのステップアップを要していたのです。特に小売店営業でコロナの影響は大きかったです。ちょうど東急ハンズとの取引が始まったばかりだったのにオーダーストップ!待っても待っても明けないコロナ、明けた時にはすっかり世の中は変わっているように思えました。
苦労や想定外のことをどう乗り越えましたか?
自分の無知には勉強をして知識を、経験の無さには来るもの拒まずやってみる、それでも足りないセンスやスキルは周りの意見を取り入れて直していく。結果を急がず根気強く、想定外の結果には原因を調べて修正していく。お金が足りない時には方々に走る、出費を減らして工夫を凝らす。どんな事業者の方もしていらっしゃることだと思いますし、自分もそのように一つひとつ乗り越えてきました。そんな中、多くの方々にどれだけ助けていただいたか?いつになったら恩返しが十分にできるか?自分の事業を頑張らなければならない理由が増えたように思います。笑 そもそもそんな困難を乗り越えられるパワーはどこから?とよく言われますが、暗いトンネルの中から見える確かな光がありました。「コアルーバッグ」はカバンの悩みを解決できるとても有効で優れた手段であること。最初は自分の自惚れのようでも時間が経つにつれ一人ひとりのユーザーが語ってくださるのです。「助かった~」「ラク!」「これが無いと~」と多くの方から言われたら、それはもうやるしかありません。その確かなニーズこそがビジネスにおいての続ける理由であり、周りが分かってくれない状況でもそれを克服し分かってくれる時まで頑張るしかないのが自分のミッションだと思っています。
今後の展開を聞かせてください。
アイデアが閃いてから今まで変わらないビジョンがあります。それは、トートバッグ、リュック、ショルダーバッグ…といった並びに「コアルーバッグ」というカテゴリーとして定着させることです。coarooといういちブランドでありながらも、コアルーバッグといえば、誰が作ろうと「コアルーバッグ」というあの便利なベルトの構造をもつものとして皆が認識してくれる日を夢見ています。今は残念ながら「5wayバッグ」とか 「コアルーリュック」 など、媒体によって命名の仕方も若干ずつ異なります。それでもこの便利な仕組みをお客様に届けたいというマーケットの動きがあるからこその現象なので嬉しく思います。いつか「コアルーベルト採用」として定着していくと確信しています。もし自分がこの世から去った後でもコアルーバッグが残ってくれれば、それを使う人はよりラクに、より便利なお出かけができるでしょうし、自分の息子や娘はそれをみて「あれはママが作ったものなんだ」という誇りが持てると思います。最高に光栄なことですね!
起業を志す方へのアドバイス

これまでに立派な創業者の方々をいっぱい見てきたので、自分がその一人であることすら恐れ多いことです。しかしその企業が存続しなければそれ以上創業者ではなくなりますので、頑張って続けることが最も大事だと思います。困難は付き物!乗り越えて当たり前!そんな自分に厳しく。でもその存続は一人では到底できないことなので、感謝の気持ちをスタートラインにしてほしいです。世の中は激しく変化していきます。努力してついていくだけでなく、この時代をけん引する「何か」を是非見つけてみてください。幸運を祈ります。
アドバイザーからの一言まったく未知の世界に、溢れ出すアイデアとバイタリティで果敢に挑んできた池さんも、創業から15年を迎えました。私もこれまで、池さんの喜びやご苦労を垣間見てまいりました。自ら催事に足を運び販売に取り組むのはもちろん、テレビショッピング、クラウドファンディング、ライセンス契約など、考え得るあらゆる手段に挑戦してこられました。だからこそ池さんは、コアルーバッグのファンはもちろん、いつも多くの応援者に囲まれています。コアルーバッグという新たなカテゴリーが社会に根づいていく未来を、私も心から楽しみにしています。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |









