株式会社ボーダーフリー
許 韓一(ほー はんいる)さん
いつ創業し、どのような事業をされているのですか?
会社設立は令和元年、2019年12月25日です。主にアメリカ、ヨーロッパ諸国から生鮮イチゴを輸入して弊社独自のサプライチェーンを活用し、B to Bで日本全国の販売先に卸しています。輸入イチゴのオフシーズンには、2年前から国産イチゴを品種限定で栃木県の農家さんから直接買い入れをし、弊社独自のサプライチェーンを活用して都内の納品先に卸しています。
創業のきっかけを教えてください。またなぜ創業したのですか?
前職も同じ生鮮輸入商社で、主に営業を担当していました。入社当時、創業者である社長が担当していたアメリカ産輸入イチゴのアシスタントから始まり、3年目から会社の方針で独立採算制を導入し、各部門毎に予算を独自で作成し、一営業担当の仕事だけではなく、イチゴを仕入れから販売まですべて予算に基づいて実行することを経験しました。この段階を終えると今度は社内小規模事業社長としての役割を学ぶことになりました。予算案の作成と実績分析、会社内販売システムとの連携、総務関連と経理部門との連携、財務管理など様々な事を学びました。最終的に、創業することを決めるきっかけになったのは、創業者である社長の早期引退とともに世代交代で会社が若い世代、若い会社に変わっていったことでした。独立して自分の会社を自分のプランニングでトライアルしたい気持ちは前からあったのですが、その気持ちが段々強くなり、20年近く働いた会社を退職することにしました。会社立ち上げを考えて動いていた時も、前職でお世話になった海外仕入先の方々や、国内の商社仲間や取引先の方々に多く助けていただきました。この方達の応援と支えによって今の我が社があると思っています。
創業してしばらく経ちました。実際にやってきてどうでしたか?
創業して間もない頃に新型コロナが始まり、3年間、ロックダウンの中で海外への出張、産地見学等は取りやめるか限定的にしか行えませんでした。もちろん、日本国内も出張、打ち合わせ等は数多く取りやめる事になり、代わりに弊社もリモート会議が主流になりました。また、コロナ禍で経済活動が制限されていたため、立ち上げたばかりの弊社の実績にも大きく影響が出てくると覚悟していましたが、イベントや外出時間が制限されていた影響もあり、この時期は家で家族単位で集まる時間が多く、街のケーキ屋さんの売上がうなぎ登りでイチゴ業界にとってはバブルになっており、我が社も毎年着実に良い実績を積むことができました。コロナ明けからは、会社の売上高比率が輸入イチゴを含めて輸入果実に頼りすぎていたので、輸入果実のオフシーズンには国産イチゴを含む国産果実を納品先にご提案することで通年のサプライヤーとしての実績を積むことが必要であると考え、栃木県のイチゴ農家さんと直接契約し、2年かけて、11月~5月までほぼ毎日、安全、安心な国産イチゴを買い入れ納品した結果、新たな信頼関係を納品先との間で築くことができました。
苦労や想定外のことをどう乗り越えましたか?
輸入イチゴ、国産イチゴともに我が社の取り扱い商品全体が生鮮食品であり、フレッシュな商品の特徴として天候に左右されやすいので常に時間との勝負です。大手エンドユーザーからは品質管理、品質保証を常に言われています。夏場は温度管理等には特別に気を使っています。平常時も常に我が社独自のサプライチェーンにて全国配送を行っていますが、近年6~8月は非常に温度が高いのでコールドチェーンをさらに強化して、スピード感をもって納品先にお届けすることを目指しています。特に輸入イチゴの場合は様々な虫の検査が行われるので、我が社はここ2年間、イチゴの品質保持対策として羽田空港での検査時間をなるべく午前9時までには終えるようにしています。これによって冷蔵庫への搬入時間が早まり、羽田の冷蔵庫から国内配送されるイチゴの品質劣化リスクが大幅に軽減されており、実際に末端の納品先からの高評価をいただいております。品質管理に関しては今後ももっと多くの納品先に安全、安心の観点から信頼され応援していただけるように努力していきます。
今後の展開を聞かせてください。
2025年度は社員を1名増やして国産イチゴ部門で頑張ってもらっています。2024年度の実績は3億7000万円でした。また、今年度は特に11月から5月まで国内イチゴを栃木県の農家さん数社と直接契約を結び、独自のサプライチェーンを通じて関東地方の納品先に毎日納品することができました。こちらを軌道に乗せた結果、2024年は国産と輸入の一年間販売が実現できた元年だったと思います。来期以降、向こう3年間は国産イチゴをはじめ国内果物全般に広げて海外販路拡大を目標として着実にプランニングします。その5年後には海外販路に対して日本産イチゴを含めて日本産果物の売上高を会社全体で5000万円アップを目標にしています。当然社員も海外とのコミュニケーション能力が高い方を2~3名採用出来ればと思っています。10年後には海外販路に対して国内有数の果物産地から仕入れ、輸出果物専門販売会社として、信頼される農家さんの販売専門のプラットフォームになることを目指し、会社全体で売上高10億円を目標にしています。
起業を志す方へのアドバイス

創業を目指すということは全て一人社長が責任あることを決定するということだと思います。これには大きなリスクと大きな挫折も伴います。これを乗り越えられる高いモチベーションと高い目標を社長自身が常に忘れないことが大事です。会社が成長し、目標の実績が実現することで達成感が得られ、それは社長個人でしか味わえない大きな財産になると思います。
アドバイザーからの一言許さんが独立開業された際、弊社を訪ねてくださり、お付き合いが始まりました。以来、日々の変化を間近で見てきました。釜山出身の許さんは、外国人ならではのご苦労や、前職企業からの営業制限など、創業当初には数々の壁を乗り越えてこられました。睡眠時間を削って栃木県で懸命に働かれていたことも印象に残っています。そんな許さんを見ていて強く感じるのは、その「義理堅さ」です。営業職として培われた信頼関係を大切にする姿勢が、現在の事業にも生きているのでしょう。会社の理念である「三方よし」を体現しながら、ボーダーフリー社は着実に成長を続けています。 株式会社マネジメントブレーン代表取締役 社長 姫野 裕基 |









